――――――あのマダオ侍の、怒涛の発言を聞いてから。

もうかれこれ、2週間近くになろうとしていた。

・・・・・神楽ちゃんの所在は、掴めていない。

まさか――――『あの時』と同じ事が、起きるなんて。

以前は星海坊主さんが、神楽ちゃんを連れて行こうとして。

親子の絆を深く感じ取っていた銀さんは、彼女を突き放したけど。

・・・・・今回は、全く違う。

僕の得意技『鼻指背負い投げ』を喰らった銀さんは、床で悶えながら苦痛を味わったが。

怒り心頭だった僕は――――怒声を室内に響かせた。

『あんた一体何考えてんだ!?神楽ちゃんを、追い出す必要あったのかよ!?
また星海坊主さんがやって来たってのかよ!?それとも、彼女がそう望んだっていうのかよ!?』

この言葉に銀さんは、鼻を押さえながら起き上がると。

『・・・・アイツだって、もう出会った頃のガキじゃねえんだ。
世間を知るには、良い機会だって。それに万事屋を辞めろなんて、言った覚えねえし。
何よりいつまでもオレと一緒ってのは、良くねえって。世間体的にもな』

――――それは、確かにそうかも知れない・・・・けど。

今更感が湧き上がるのは、何故だろうか。

『だからって、急すぎますよ!もうちょっと、神楽ちゃんの気持ちも考えて―――』

『アイツの気持ちを優先してたら、こっちがもたねえっての』

ぼそりと呟かれた言葉に、思わず首を傾げた。

『・・・・・・え?』

『――――とにかく!雇い主兼家主のオレが、決めた事だ。一々口挟むな、良いな?』

「あ〜痛てえ」と言いながら鼻穴にティッシュを、詰め込む男を僕は睨み付けたのだ。

――――――銀さんは『万事屋』を辞めろと、言ってはいないらしいが。
・・・・現時点で彼女が、此処に姿を現す事は無い。

そんな訳で、僕は。
たまに入る依頼の仕事をこなしながら、神楽ちゃんを探す日々が続いている。

・・・・・・今も―――――彼女がいそうな場所を、転々と探しているのだが。

「―――――いない・・・・か」

かぶき町って、案外狭そうでいて広いのかも知れない。

神楽ちゃんを一番慕っている、探索能力が極めて高い定春でさえ。

居場所を突き止められない、有様だったし。

そんな状況の中、銀さんは――――いつもと変わらない。

長椅子に寝転び、ジャンプを熟読し。

朝一でパチンコに出掛けたり、夕食後は不夜城に繰り出し朝帰りしたり。

いい加減その態度に、僕の怒りは再び頂点に達し言及するも。

『アイツが自身で決めた事だ』と、冷静に切り返されてしまった。

・・・・・ねえ、銀さん。あんた本当にこれで、良いんですか?



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