神楽が此処を出て行って、もう二週間が経つ。
・・・・・そして、顔を出す事は無い。
もう一人の従業員は、今まで共に過ごした少女を捜索しに出ている。
二週間前にこの場所で新八に追求され、真相を話したものの。
『あの時』と同じ様に激怒され、同じ技を喰らって。
お陰で一日中背中と鼻が痛み、血が止まるのに時間が掛かってしまった。
当初は「神楽を探さなくて良いのか?」と、怒り口調で何度も口に出されたが。
今では諦めたのか、何も言っては来ない。
長椅子に仰向けになり、読んでいた愛読書から無意識に視線を外し。
酢昆布娘が寝室にしていた、押入れに瞳を向ければ。
―――――『銀ちゃん!』と、名を呼んで。
今にも其処の襖を開いて、出て来そうな感じを覚える。
「―――――――――」
・・・・・探したから、どうなるってんだよ。
オレと神楽の関係が、変わる訳でもない。
―――――そんなの。
「・・・・・生殺しが、続くだけじゃねえか」
「何が生殺しなんです?」
突如降って湧いた声に、思わず身体を反射的に起こす。
声の主に視界を移せば、其処には新八の姉・お妙が立っていた。
「――――脅かすなよ。突然湧いて出やがって」
「あら?ちゃんと、チャイム鳴らしましたけど?鍵が開いてたんで、無用心と思いつつお邪魔しました」
・・・・・そうだったけ?・・・・つうか。
「普通鍵開いてても、中に入ってくるか?」
「銀さんのブーツ、ありましたし。一応声も、掛けたんですけど」
・・・・・全く気付かんかった。
お妙は軽く両肩を竦めると、溜息を吐いた。
「まるで、抜け殻同然だわ」
「は?誰が?」
オレの問いに直ぐには答えず足を動かし、対の長椅子に腰を下ろす。
「他に誰がいるっていうんです?此処には私と貴方しかいませんよ」
「―――――何?抜け殻になっちまうような、出来事でも起きたんですか?
おたくみたいなタイプでも、そんな風になる事あんの?こりゃ珍しいなあ、おい。」
眼前にいる女は途端に両目を据わらせ、黒いオーラを漂わせながらドスのある一声。
「てめえの事だよ」