「――――オレがいつ、抜け殻状態になってるってんだよ?」
「まあまあ、自覚無しなんですか?元々頭の中身が無い人だって、思っていたけど。
此処まで酷いなんて。脳味噌を少しでも鍛えたら、いかかです?」
お妙の言葉に、思わず額に血管が浮くのが分かった。
「―――――おいおい。何でおたくに其処まで、言われなきゃいけないの?
心配無用ですからあ!オレの脳細胞はピチピチ、永遠の20歳ですからあ!」
「無自覚の人ほど、そう言うのよね」と。
しみじみと深い息を吐きながら、お妙は口にした。
「一体何しに来た訳?からかいに、来やがったのか?
生憎銀さんも、おたくを相手にする程暇じゃねえんでね?とっとと、あちらからお帰り下さい!」
右手の人差し指で玄関を示したが、お妙は立ち上がろうともせず冷笑を浴びせる。
「長椅子に寝転んで、ジャンプ読んでた輩が何言ってやがる」
再びドスを効かせた声が、室内に響いた。
お妙は鋭く据わらせた両目を、一旦元の形に戻すと。
「・・・・・神楽ちゃんを、追い出したんですってね?」
小声だがしっかりとした口調で、こちらに問い掛けてきた。
「―――――それが?」
「―――――探さなくて良いんですか?
もう二週間もこちらに顔を出してないって言うじゃない。
もしかしたら神楽ちゃん、万事屋を辞める気で――――」
「・・・・そうしたいってんなら、別に良いんじゃね?
頭下げて頼んだ覚えもねえし。アイツが勝手に居座って、一緒に依頼をこなして来ただけの事だし」
「・・・・本当に、それで良いんですか?」
まるで咎める様な言い振りに、思わず苛立つ。
「あのさあ、いい加減にしてくれよ。
オレは神楽の保護者でも何でも無いし、血の通った家族でもねえんだ。
奴が『万事屋』を辞めようとして来ないってんなら、それまでの事だろ?
そもそも!お前等姉弟は、オレに何を望んでんだよ!?」
――――――本当これ以上、何をどうしろってんだ?
確かに神楽を傷つけたかも知れないが、このまま此処にずっといて。
更に傷つけるかも知れないってんなら、此処を離れた方が良いだろが!
もうオレは、神楽の事を。
『ガキ』の頃の様に、見ること出来ないんだよ。
どうしても『男』として、アイツを見ちまうんだよ。
一緒に住んでくのは、別に難しい事じゃねえ。
何だかんだ言って、4年間空間を共にして来た。
だが・・・・・もしもこの先一緒にいて、オレの理性が―――――暴走して。
アイツ自身を穢す様な事になれば・・・・それこそ、自分を許せねえよ。