間接的に「ガキ」と、眼前の女から言われたオレは。

思わず額に血管が浮くのが、分かった。

「―――――あのなあ!言っていい事と、悪ィ事が――――――」

「だって事実ですもの。あんなに一番近くにいて、一緒にいて。分かってないなんて」

お妙の言葉に思わず、怒りの言葉が喉元に詰まってしまう。

「―――――――っ」

「銀さん。貴方が一番神楽ちゃんを、理解してる筈なんですよ?」

「・・・・・・・・・・・・」

いや―――――そんな断言されちまっても・・・・・。

じゃあコイツは、神楽の事を理解してんのか?

散々コケにされてる手前、このままでは引くに引けない。

「そういうおたくは?あの娘を理解してるって、言えんのかよ?」

聊かぶっきら口調で、尋ねたら。

「少なくとも、貴方よりは」と即答されてしまった。

―――――身を乗り出して、反論しようとした時。

勢い良く玄関が開かれる音が、行動を制御させる。

「!?」

何事かと思い、思わず腰を上げれば。

「銀さん!!!」                

オレの名を呼ぶ、怒りを含めた新八の声色が室内に響き。

廊下をドスドスと歩き、居間へと顔を出すと。

姉の姿に目もくれず、物凄い形相でこちらに向かって来て。

眼前で立ち止まったかと思うと、テーブルの上に音をさせて何かを置いた。

「・・・・・・?」

首を傾げて、新八の方へと視線を戻せば。

レンズ越の瞳が、潤んでる様に見える。

「――――――・・・・です」

ぼそりと呟かれ、聞き取れない為。

「は?」と、聞き返すと――――――メガネは、キッと両目を吊り上げて。

「神楽ちゃんの、辞表ですよ!」

・・・・・・辞・・・・・表?

よくよく目を凝らせば、確かにしわくちゃな封筒の表面に『辞表』の二文字がある。

「あんたに――――渡してくれって、頼まれたんだよ!
もう此処には顔出さないって!そう言ってましたよ!」

『顔を出さない』との、新八の言葉を聞いた瞬間。

「そうか」と――――無意識のうちに、口が動いていた。



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