「どうして、銀さんの言葉に従うんですか!!」

僕より数歩先を歩く実姉に向かって、感情をぶつける。

「神楽ちゃんが、万事屋を辞めるって――――辞表を出したんですよ!?
それに対して、あの男は『そうか』の一言だけで!止めようともしないなんて!」

両足を止めた姉上がこちらを振り向き、静かに言葉を述べる。

「・・・・一番辛いのは――――きっと、銀さんよ」

「そうですか!?僕にはそんな風に、見えませんでしたけど?」

本当に辛いんだったら、どうして彼女を放っておくんだ?

探すなりなんなりして、行動を起こせば良いのに。

憤慨している僕を見つめて、姉上は苦笑いを浮かべた。

「でも、敢えてそれを表に出そうとしない。本当、素直じゃないわよね」

「――――――――」

「新ちゃんだって、気付いてるんでしょう?銀さんの本当の気持ち」

―――――姉上の言いたい事は、十分理解している。

銀さんは、本音を滅多に言わない事も。

あの神楽ちゃんの辞表を見て、銀さんが何も感じなかったなんて。

・・・・・0に等しい。だけど。

「―――――知りませんよ。あんな・・・・天邪鬼の考える事なんて」

「心の奥底では、引き止めたい筈なのよ。ただそれに、気付いていない振りをしてるだけで。
自分の気持ち正直に、行動すれば良いだけなのにね」

「・・・・姉上」

「でもそれは、私達がどうこう出来る問題じゃない。
本人が気付いて、初めて動けるものなの。銀さんがああ口にしてる以上、何を言っても無駄だわ」

再び歩み始めた姉上の背中に、僕は問い掛けてみた。

「・・・・神楽ちゃん――――本当に、戻って来ないんでしょうか?」

「――――それも神楽ちゃん次第・・・・かしら」

「・・・・・・・・・」

彼女次第―――――か。

辞表を出した手前神楽ちゃん自身が、万事屋に戻って来る事など皆無かも知れない。

「――――でも・・・・僕は、神楽ちゃんに戻って来て欲しいんです」

数字にしてみれば、僕等が出会ってまだ4年。

たったの4年間だけど―――その分、凝縮された時間だった。

滅茶苦茶な事も多かったけど、大切な『仲間』として――――。

確実に『絆』を、築いて来た筈なんだ・・・・・。

それがこんな――――こんな形で、崩れてしまうんだろうか?

そんなのあまりにも・・・・・寂しいじゃないか。



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