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馴染みの店の暖簾を、右手で払い。

戸を開けて店内へと、足を踏み入れる。

「らっしゃい!」とオヤジの声に出迎えられ、会釈しつつカウンターに向かうと。

見知った顔が、そこにあった。

「あれ?銀さんじゃねえか」

するとオレに気付き、左手を上げる。

「よお、長谷川さん。何?仕事帰り?」

隣に腰を下ろし、まずはビール瓶を注文。

「そうなんだけどさあ~・・・・まあた、クビになっちまってね。んで自棄酒」

熱燗を猪口に注ぎ、くいっと一気に煽る。

「あんた本当に、仕事運ねえなあ。もう同情すら超えるよ」

思わず左肩を、二回ほど軽く叩いてやった。

「ふん、言ってろよ。いつかこの手で、『正社員』の肩書きを掴み取ってやるんだ!オレは!」

「へえへえ、頑張ってね」

軽く受け流しながら、目の前に置かれた肴を箸で摘み口に運ぶ。

甘辛く煮込まれた里芋が、舌の上で転がった。

「そういうそっちこそ、どうなんだよ?」

「何が?」

「万事屋の仕事。捗ってんの?」

「―――――まあまあ・・・・・ってとこだな」

待望のビールが来たと思ったら、オレの手をすり抜け長谷川さんの手に移動する。

「ほれ」

それに応え様と、グラスを持ち傾けた。

「どうも」

液体が注がれると、白い気泡が現れた。

「―――――そういえばさ、最近見かけないよな」

再び同じ答えを、グラサン男に向ける。

「何が?」

「何って――――おたくんとこの、激辛口チャイナ娘だよ。
新八君は何度か、街中で見かけたけど。最近三人でつるんでるとこ、見てねえからさ」

「・・・・・・・・・」

まさかこんな場所でも、神楽の名前を聞く羽目になるとは。

少しでも気を紛らそうと、思って来たってのに。

「どうしてんの?体調でも崩したんか?」

琥珀色の液体を一気に、喉元に流し込み重くなっている口をこじ開けた。

「―――――アイツなら。神楽なら、辞めたよ」




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