――――ひょっとしたら・・・・もう『地球』を離れたのかも知れない。

街中でも見掛けないってんなら、そう考えるのが一番の妥当だろう。

あの禿げ親父がまた迎えに来たとは、考えにくいし。

無銭に近い状態で、正当なルートを取ったとも思えない。

故郷から、『地球』に密航して来た様に。

同じ手を使って、銀河船に潜り込んだのかも。

頭の片隅に置いていた筈なのに、胸には強烈な痛みが宿る。

この痛みが消えるのは、一体いつになるのだろうか。

・・・・・そう簡単には、消えちゃくれねえだろうな。

「辛そうですねェ・・・・旦那」

物思いに耽っていたらしく、沖田君の声で我に返る。

「――――え?何が?」

「辛そうって、言ったんでさァ。チャイナが、傍からいなくなったからですかィ?」

――――全く・・・・沖田君も長谷川のおっさんも。

どうしてこう、触れて欲しくない所を突いてくんのかね。

返答はせずに、疑問を疑問で返してやった。

「そういう沖田君こそ。神楽を見掛けなくなって、寂しいんじゃないの?」

「ええ。寂しいですよ」

否定する所か――――やけにきっぱりとした、回答が戻って来たので。

思わず半開きの眼が、大きく開いてしまった。

オレの態度に彼は、唇の片端を吊り上げる。

「唯一オレと、タメ張れる奴でしたからねェ。まだ勝負も、着いちゃいねえってのに」

・・・・・あ、ああ。そういう意味ね。

――――驚いた。てっきり沖田君、神楽の事が―――――。

「それに」

どうやら、まだ言葉が続くらしい――――それとなしに、待っていたら。

「正直アイツの事、憎からず思ってたんでさァ。
やっと手前自身の気持ちに、素直になろうかって思った矢先に・・・・姿眩ませられちまった」

さらりと告げられた台詞だが、オレにとっては爆弾発言で。

「どんなに街中を探しても、目玉がひん剥くまで動かしても。
チャイナの姿は見当たらない。同じ様な傘を見つけると、駆けつける自分がいるんですよ。
・・・・笑っちまうでしょ?」

―――――自分の気持ちに正直に動く彼を見て、羨ましいと思う自分がいた。

もし今この場に神楽が現れたとしたら、きっと彼は臆する事無く思いを告げるんだろう。

「・・・・・いいや。笑わねえよ」

沖田君を嘲笑う事なんざ、出来る筈も無い――――それよりも。

酒に逃げる不甲斐ない己に対して、自嘲するしかなかった。




※久しぶりにこちらのスペースに、言い訳なんぞを書いてみたり。←おい。
基本銀神なんですが、どうもこの先、銀神←沖になりそうなフインキです。
沖神ファンの皆様、本当に申し訳ありません。

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