「あの・・・・そよちゃん」

「はい?」

4年前と変わらず、おしとやかで上品なフインキ。

「その・・・・・有難うアル。あの時、私を匿ってくれて」

あの出来事がきっかけで、私は彼女のボディガードを務める事になった。

どうやら以前から彼女の護衛の話が、しきりに持ち上がっていたらしい。

いくら城内で過ごす時間が多いとは言え、将軍の妹君。

いつ何処で誰に狙われるか、計り知れない――――。

そんな時に偶然私が、彼女を助けた事が上様の耳に入り。

年頃も近いと言う事で、直に勅命を承ったのだった。

報酬も貰え三食寝床付きとなれば、断る理由なぞありはしない。

この城内にいれば、外出もあまり出来ないとはいえ。

今の私からしてみれば、願ってもいない話だし。

それに4年ぶりの友人の傍に、いつまでもいられるのだ。

こんな良い話を、断るほうが馬鹿だろう。

勿論一度『北斗心軒』に戻り、幾松姐に事後報告をしたら。

最初は驚いていたが、「これもあんたの運命なのかもね」と言ってくれて。

「自分の足で路を切り開いてごらん」と、背中を押してくれた。

―――――自分の足で、路を切り開く。

万事屋を離れ新なるスタートが、此処お江戸城から始まる。

えいりあんはんたーになる夢はまだ、捨ててはいないが。

まずは『地球』を離れる為の、資金作りも始めなければ。

「・・・・何だか、訳ありに見えたので。勝手に籠の中に押し込んでしまって、すみませんでした。
しかも城にまで、連れ込んでしまって・・・・・」

丁寧に頭を下げる彼女に、私は思い切り首を左右に振った。

「ううん!そよちゃんの機転のお陰で、私助かったネ。真選組に、見つからずに済んだし。
それに今こうして、傍にいれて話も出来るし――――とても、嬉しいアル」

この言葉に彼女は「良かった」と、笑顔を浮かべた。

「私も嬉しいです。だってまた、女王さんに会えたんだもの。
毎日の様に城の窓から、町を見下ろして・・・・あの時の事を思い出していたの。
一日だけだったけど・・・・いろんな事が経験出来て、とても楽しかった」

楽しそうに笑う彼女を見てると、思わず頬が緩んでしまう。

「――――また、城を抜け出そうカ?今度は私がいるから、そう簡単には見つからないヨ」

片目を瞑り、両手を腰に当てふんぞり返ってみせる。

「ふふふ。その時は、お願いします」

いたずらっ子の様に顔を見合わせ、声を立てて笑った。




→NEXT

←BACK

小説トップページへ戻る