いくら何でも、同室という訳にはいかず。

私はそよちゃんの寝室の近くに、個室を与えられた。

護衛如きがと、陰口を囁かれているのは知っているが。

これを決めたのも、茂茂公なので誰も公言する事は出来ないのだ。

天人達からは、形だけの権力者としか思われていない様だが。

このお江戸城内では御威光を発揮するらしく、彼の下した命には誰も逆らわない。

そのお陰でプライベートを、邪魔されずに済んでいる。

閉じられた窓の障子を、右手で開ければ。

先程よりもネオンの光が、夜空を煌々と染め上げていた。

―――――また銀ちゃんは・・・・あの歓楽街へと繰り出しているのかな。

私がいてもいなくても・・・・大して生活、変わってなさそう。

ねえ、銀ちゃん。今頃、どうしてる?

ちゃんと・・・・一人の時間、持ててる?

新八と定春と、万事屋をうまくやってる?

私ね――――上様の妹君の、護衛を勤める事になったネ。

食事は三食で卵掛けご飯所か、老舗旅館並みの豪勢な朝食が出てくるし。

万事屋で依頼をこなしてた時よりも、倍の報酬が貰えるんだヨ?

おこづかいも、300円以上だし――――好きなモノ買い放題アル。

―――――そう、以前よりも・・・・好待遇で。

文句の付け所が無い・・・・・筈なのに。

煌びやかに灯る、不夜城の方向へと視線を移動させれば。

脳裏に浮かぶ、自由奔放に生えた銀髪の男の顔。

「・・・・銀ちゃん」

両膝を力強く抱えて、膝頭に顔を埋める。

――――私やっぱり、銀ちゃんが好きなんだ。

どんなに邪魔者扱いされようが、ガキ扱いされようが。

私にとって銀ちゃんは、『特別な人』である事に変わりは無い。

いつかこの想いも――――消える日が来るのかナ?

このまま銀ちゃんに接する事無く、月日を過ごしていけば。

『過去の人』に、変わってくれるだろうか。

「・・・・同じ街にいて、それも難しいアルナ」

自分の出した矛盾の答えに、苦笑いを浮かべる。

私が『地球』を離れるなら、別なんだろうけど。

今もこうして両目を瞑れば自分の名を呼ぶ、愛しい男の声色が聞こえて来る様で。

閉じられた瞼をゆっくり開け、再び視界に不夜城を映し独り呟いた。

「・・・・銀ちゃん中毒に、冒されてるネ」


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