最初の頃はあの娘が、此処を出て行って・・・・・。
静か過ぎる室内に、落ち着く事も出来ず。
逃げる様にしながら、不夜城のネオンを追い求めてたってのに。
普段なら不夜城に向かうこの身体は、今―――。
自室の布団に横たわりながら、豆電の極小の灯に照らされた天井を。
飽きる事無く、じっと見つめている。
・・・・・凝視してたって、何ら景色が変わる訳でもねえのに。
時々襖越しから感じる気配は、寝ぼけて微かに身体を動かすデカ犬だ。
真選組の局長こと、ゴリが『万事屋』に『依頼』を持ってきてから。
――――既に3週間が、経っていた――――。
しっかし・・・・新八も懲りずに、よく『万事屋』に来やがるよなあ。
あんだけキレたんだ―――てっきり、「辞める」の一言が出てくると思ったのに。
『今のあんたを放っておく程、僕は非人道的ではないです』
――――なんて、いけしゃあしゃあと言いやがって。
「・・・・お人好しめ」
胸の痛みは・・・・・・未だに癒えない。
簡単に消えるんなら、苦労しねえだろうけど。
「―――――――」
――――これは世に言う、『失恋』なんだろうか。
「はっ・・・・・笑える」
何が笑えるって、恋を知らない初心な少年じゃあるまいし。
―――――こうみたって、一端の成人男性だから。
アイツと出逢う前から、いろんな女との関わりも余裕であった訳で。
勿論『好いた腫れた』もあったし、下手すりゃ『泥沼』関係になった時もある。
一通り『女』ってモンを、経験してる男がだ。
自分より10以下の娘に片恋し―――けれどそれを告げる勇気も無く。
気持ちを抑えられない自分が嫌で、『世間体』の言葉を借りて逃げ道を作り。
・・・・・・追い出したまでは、良かったが。
胸の痛みと静寂に耐え切れず、酒に溺れる始末。
気持ちを伝えず――――行動も何も起こしてねえくせに、『失恋』ってか?銀時。
「・・・・おかしすぎて、腹が捩れらあ」
独り言を呟きながら、開いていた両目をゆっくり閉じていった。
だが、一向に眠りは訪れてくれそうにない。
それどころか瞼の奥で、失恋の相手がこちらに笑顔を向けて現れる。
「・・・・全くよお。また今晩寝れそうにねえじゃん」
勘弁してくれとばかりに、頭から布団を被った。