―――こりゃまた、随分と仰々しいアルナ。

どこぞの雑誌で見た――――確か、サンキンコウタイ?だっけ?

あんな感じで、只今列はお江戸の街中を練り歩いている。

一体何人の付き人達が、お供する事やら。

上様やそよちゃんを初めとする、将軍家御一行。

その後ろに続く、家臣達の高級車。

そしてそれらの四方を囲む、役人達。

総勢合わせれば、軽く千を越してるんじゃなかろうか。

勿論私も、護衛として彼女の車の傍にいる。

但し――――その他大勢の『腰元』として。

『女王さん、これを見に付けた方が良いと思いますよ?』

・・・・・と、雇用主は笑顔で提案をしてくれた。

万事屋では変装なんてモノは、かなりしてきた方だが。

こうも完璧に、上から下まで・・・・己を無くす事になるとは。

鬘を被され、腰元用の着物を纏い――――私は今道中を歩いている。

――――――そのお陰で。

前方・・・・・上様の護衛を担っている、くされ縁の『真選組』の奴等さえ。

私の正体に、気付いてはいない。

彼女の持ち出してくれたアイデアに、心底感謝した。

なまじ両目と、言葉に気をつけてさえいれば。

・・・・・気付かれる事は、まず無いだろう。

前の方では忘れる事の出来ない、黒い制服姿の男達が。

警護を怠るなかれと、鋭い視線を周囲に巡らせている。

当然の如くゴリ・・・・マヨ男、そして――――宿敵サド野郎の姿があった。

この催しさえ乗り越えれば、また当分はこいつ等と離れていられる。

―――――絶対に気付かれてなるものか・・・・と。

視線を下に逸らした時だった――――聞きなれた声が降ってきたのは。

「――――おい。そこの腰元」

この声・・・・・!サド野郎?

「オレの声が、聞こえてねえのかィ?」

―――――不味いアル!

「・・・・・いえ」

声色を少し変えて、言葉少なく返答すれば。

「さっきから何こっちを、ずっと凝視してやがんでぇ」

「そんな、とんでもございません」と、顔を俯かせ慌てて取り繕う。

「嘘だね。『殺気』に近い気を、ビンビンに感じたぜ?」



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