――――――ったく・・・・本当、高尚なご趣味だねえ。
ゴリの依頼を受けて、丸一ヶ月。丁度今日が依頼の日だ。
周囲を巡らせば、仰々しい程の人の数。
「――――す・・・・凄い、人ですね。銀さん」
従業員であるダメガネが、興奮気味に言葉を放つ。
こりゃあ確かに、特別警察『真選組』だけじゃ事足りねえだろう。
真選組局長の発案とあって、出迎えられた用心棒『万事屋』だが。
当然気に喰わねえオーラを、全身から醸し出してる男が一人いた。
口元から煙草を咥え、紫煙をこちらに吐き出す目つきの悪い幹部。
「おい。オレははなっから、てめえなんざ当てにしてねえからな。
こっちの公務の邪魔しやがったら即あの世逝きさせてやるから、覚悟しやがれ」
およそ市民の味方とは、思えない台詞を口から吐き出した。
ニコマヨは更に目付きを鋭くさせて、苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべた。
「あらあら〜?その公務を手伝って欲しいって。てめえん所の頭が、頼んで来たんですけどお?」
「―――――仕方ねえだろ!あの人には、『将軍様の守護』が第一なんだ。
もしこの催しで何かあったりでもしたら、それこそ腹を切りかねねえよ。
将軍に何かあるくらいなら。てめえに何かあった方が良い。そういう人なんだよ、近藤さんは。
それを阻止する為、真選組は任務を全うする。
しかし―――言っておくが、オレ等の主君は将軍じゃなく。あくまでも『近藤 勲』だからな」
肺に思い切り、煙を送り込むと――――溜息と一緒に紫煙を吐き出した。
「――――あれ?沖田さん。あそこで何してるんですかね?」
一旦話しが終わったのを見計らってか、新八は後方へと視線を送っている。
「・・・・ったく。あの馬鹿が。早速仕事サボりかよ」
額に血管を浮かべて舌打ちしながら、部下兼後輩の元へとニコマヨが動こうとしたが。
「お〜い!トシいいいい!」
前方からゴリの呼ぶ声に、動きは止まった。
「――――ああ。そういやあ、隊士達の警備について――――再確認するって言ってたな」
どんなサボりの部下がいようとも、この男にとっては公務と局長が優先であるらしい。
「ちょっと、アイツを否が応でも引きずって来てくれや」
そう言うと足早に、ニコマヨの副長はゴリの元へと向かった。
「・・・・でも、丁度沖田さんがいる場所って。
妹君の辺りじゃないですか?何かあったんでしょうかね?」
首を傾げる従業員の問い掛けに、「行ってみりゃわかる」と答えて。
オレ達は真選組・一番隊組長へ声を掛ける為に、止めていた歩を進めた。
「沖田く〜ん!」と、遠くから名を呼びながら。