「――――――――!」
『沖田く〜ん!』と。
その声はまるで放物線を描く様に、私の両耳の鼓膜に届けられた。
・・・・・聞き間違える筈はない・・・・まさ・・・か?
どんどんこちらに近づいて来る、二人らしき気配。
四本の足が、同時に――――止まる。
「こんな所で、何してんの?」
この抑揚の無い・・・・気だるそうな声。
――――――銀ちゃん!?
「土方さん、相当お冠でしたよ?またサボってるって」
・・・・・新・・・・八・・・・・まで?
「別にサボってなんざ、いやせんぜ?怪しい人物に対して、職問してただけでさァ」
『万事屋』メンバーに視線を一瞬だけ送って、再び視線を戻す感覚。
「―――――ったって。怪しい人物って・・・・此処いら将軍の妹付きの腰元達だろ?」
私は背中に冷や汗を掻きながら、その場が収まってくれるのを待った。
地面に両手をついて、ひたすら頭を下げ――――この男達がいなくなってくれるのを。
「いやね?どうも、この女から。『殺気』に近い気を感じたモンで」
刀の鞘が目の前に現れる・・・・どうする?どうこの場を乗り切る?
「そんな沖田さん、考え過ぎじゃないんですか?どう見たって、彼女普通の腰元ですよ」
新八が苦笑いで、ドS王子を嗜め始める。
「あ〜あ、ほら。よりによって『真選組』の一番隊組長に、詰問受けちゃってっから。
身体全身震えて怖がってんじゃないの。可愛そうに、勘弁してやったらあ?」
――――銀・・・・ちゃん。
「それよりも、ほら。近藤さんと、土方さんの所へ戻らないと。
幹部会を急遽開くみたいな事言ってましたし。待ってるみたいですよ?」
2トップの名前を出されたのが効いたのか、それとも単に諦めたのか。
「分かりやした。今から、そっちへ向かいまさァ」
そう言うとドS王子は、刀の鞘を引っ込め踵を返す。
・・・・・たす・・・・かった・・・・・。
強張った身体が、一気に抜けていくのを感じた。
「大丈夫ですか?」
新八が心配そうに声を掛けてくれ、私は無意識に首を縦に振る。
「まあ――――あんだけ、詰問されちゃ怖くて動けないわな」
「有難う」と言いたかったのだが、二人は何事も無かった様に私から離れていく。
――――――何故?銀ちゃんと、新八が・・・・此処に?
――――が。私の胸中に浮かんだ疑問は、後々解決される事になる。