御苑の紅葉は、それは見事で。
良く晴れた青空に、彩を添え加えていた。
「――――上様の気持ちも、分からんでもねえな」
「そうですね。こんなに綺麗な紅葉の木々、姉上にも見せたかったですよ」
オレ等『万事屋』が配置されたのは。
金屏風を背に、真ん中に座した茂茂公の丁度左側で。
反対側には腐れ縁の、真選組トリオが横一列に並んでいた。
以下の隊士達は上様や妹君、重臣達を囲うように警備にあたっている。
「ほうら。もっとくいっといけや、茂公。折角の紅葉狩りなんだからよお」
上様と重臣達に混じって、既に顔を赤らめながら酒を勧めているのは。
『破壊王』こと、松平片栗虎だ。
―――――おいおい。警察庁長官が、あんなんで良いのかよ。
そんな胸中とは他所に、もう酒宴が騒がしく始まっていた。
「あ〜あ。昼間っから迎え酒か。オレも混ざりてえもんだ」
本当・・・・ゴリの依頼なんか、なけりゃな。
「あれ?妹君と結構距離、離れてるんですね」
新八の視線を辿り、複数の腰元達に囲まれている姫君を見る。
「あんまりこういう酒宴の席が、好まねえんじゃないの?」
「・・・・・ああ。なるほど」
この状況だと、更に酷くなりそうだもんな。
「うあ〜」と両腕を上げて、背を伸ばす。
一体何時間、こいつ等に付き合う羽目になるのやら。
「真選組からは、たっぷり報酬――――ふんだくってやんねえとな」
「そう・・・・うまくいきますかねえ?」
苦笑い交じりで答えた新八は、両肩を竦める。
「――――おい。総悟?」と、突然ゴリの声が鼓膜に届いた。
無意識にそちらに視線を向けると、沖田君が場を離れようとしている。
「てめえ、何処にふけようとしてやがる。大事な公務だって事忘れてんじゃねえだろうな」
ニコマヨが煙草を噛み潰しながら、牽制したのだが。
当の本人はしれっとして、「厠でさァ」と返答した。
「そんなモン、ちゃんと配置つく前に行っておきやがれ!」
「嫌ですねぇ、土方さん。人間の生理現象は、止められるモンじゃありやせんぜ?
それともこの場所で、すっきりしても良いんですかィ?」
上様のすぐいる場所で、いくら何でも立ちションはマズイと考えたのか。
「―――――とっとと行って、戻って来い!!」
額に血管を浮かべた、ニコマヨの怒声が御苑内に高く響いた。