「な〜んか。特に何も、起きそうにないって感じ?」

「―――――そうですねえ。これだけ、隊士さん達がいるんじゃ。不当な輩も出て来なそうな気がしますよ」

全く真面目に突っ立ってんのが、馬鹿らしく思えてくる。

目の前じゃ案の定、出来上がった連中共が大声を出し騒がしいたらありゃしねえ。

「気を抜くなよ?万事屋。いつ何時何が起こるか分からんからな」

突然反対側から、ゴリの忠告が届けられた。

「近藤さん。そんな腑抜けた奴に言ったって、どうせ時間の無駄だ」

肺から紫煙を吐き出し、言いたい事言ってくれるニコマヨ野郎。

「おんやあ?そういう言い方する訳?言っとくけど、オレ等はいつ帰っても良いんだぜ?
おたく等のボスが、どうしてもって頭下げたから?来てやったってのに?なあ?新八」

両手を絡め頭に乗せて、鼻で笑って言葉を返してやる。

「お〜お。別に、構わないぜ?とっとと帰って、クソでもして寝てろ」

吐き捨てる様な台詞に、額に血管が浮かぶのを感じた。

本当に帰ってやろうかと、思った――――その時。

「いや!待て!待ってくれ!それは困る!!」

ゴリの慌てた声が、それを制する。その態度に、土方は眉間に皺を寄せ口を開いた。

「近藤さん!上様と妹君の警護なんて、オレ達だけでも十分だろ!
万事屋の野郎の力を借りるのはあんだけ反対したのに、あんたは言う事聞こうともしやしねえ!」

「トシ!!」

急に真顔になったゴリが、ニコマヨの名を口にした。

「本当ならオレだって、『真選組』だけの力で。上様とそよ様を警護したいさ。
でも、もし。オレ達だけの力が、足りなかったらどうする!?もっと手強い敵が現れたらどうする!?
大人数で急襲されたらどうする!?その間に、上様とそよ様に何かあったらどうする!?」

ゴリの迫力に、ニコマヨが躊躇している。

「・・・・それは」

「――――お前が『真選組』を誇りに思ってるのは、百も承知している。
だが誇りも大事だが、時にはそれを捨てなければならない時だってある。
もしいざ何かあっても、万事屋達の力を借りて――――それで上様やそよ様が無事であったなら。
オレは正しい選択をしたと、胸を張って言える。オレの言ってる事は、間違ってるか?トシ」

はあ〜・・・・っと、深く溜息を吐いたニコマヨ。

「――――分かったよ、近藤さん」

顔を俯かせ新しく煙草を咥える副官に向かって、ゴリは愛嬌のある笑顔を浮かべた。

「うむ。お前なら、分かってくれると信じてたからな」

「――――ったく。だが、これっきりだからな。奴等と組むのは」

そう言って真選組の副官は、紫煙を上空へ向けて吐き出した。


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