・・・・・そよちゃん!
何と言う失態――――自分が席を、外した隙に・・・・。
今の私の雇い主であり、大切な親友でもある彼女が。
数人の天人達から、銃口を向けられている。
そよちゃんは、突然の出来事に身体を大きく震わせていた。
内心舌打ちをしながら、状況を素早く飲み込む為に。
少しずつ、少しずつ・・・・気配を気取られない様に、近づいて行く。
あいつ等―――――・・・・この前の!
―――――忘れもしない、厭らしい笑みを浮かべる天人共。
「優雅なモンだなあ?おい。お飾りの徳川家が、紅葉狩りたあ――――高尚な趣味なこって。
お前等はお飾りらしく、黙って城内に閉じこもっていりゃあ良いんだよ。
それかとっととお家断絶して、大人しくオレ等天人に実権を譲れって。
そうすりゃ、もっとこのお江戸を良くしてやるぜ?」
大層なご高説に、仲間達も下品な笑い声を上げる。
―――――言いたい事、言いやがって!
以前の様に・・・・それこそ、無駄口が叩けない程に。
滅多打ちにしてやろうかと、草陰から身を乗り出した時。
「――――頼むから、その銃口。下ろしてくれねえかなァ?
上様の妹君と知っての狼藉たあ、見逃す訳にいかねえんでね」
・・・・・ドS王子?
此処からでも、十分見て分かる――――程。
ドス黒いオーラを、全身から発していた。
『殺気』・・・・この二文字が、ぴたりと当て嵌まる。
どうして?何でアイツが、出て来るネ!?
「オレが大人しくしている内に・・・・・とっとと、投降しちまいな」
右手で柄を掴み、鞘から愛刀ゆっくり抜き出し。
天人共に、剣先を向けた――――が。
奴等は余程馬鹿なのか、それとも余裕なのか。
にやりと言った擬音が合う、笑みを浮かべると。
「・・・・知ってるぜ?あんた『真選組』の沖田だろ?
幕府の飼い犬が、しゃしゃり出て来るんじゃねえよ。――――大体。
お前の獲物で、オレ等を潰せるとでも思ってんのか?」
「そんなの、やってみなきゃ分かんねえだろう?」
構えを取るドS王子に、天人達は「おっと」と銃口を更に人質に近づけた。
「動いたら、即引き金を引くぜ?そうなれば、お前は――――人殺しだ。
『一番隊』隊長の名が泣くだろ?下手したら、切腹モンか。まあそれはそれで、面白いけれどな」
カチリと鳴る金属音に、流石のドS男も―――動けずにいた。