「―――――ったく、面倒臭せえなあ!何だって、よりによって。妹君が狙われるんだよ」
何時そよ君を、救出するか――――その瞬間を只管待ち続けながら。
天人共と沖田君の会話を、固唾を飲んで見守る。
「上様には、『真選組』の3トップが警護してますからね。
他の幹部の方々は、この御苑の周囲を警備されてるらしいですし・・・・って。
あれ!沖田さんじゃないですか!上様の警護は良いんですか!?」
ダメガネが大慌てし始めるのを、横目で見やりながら。
今更、気付いたんかお前は。――――と思わず心の中で突っ込む。
「・・・・恐らく、大丈夫だろうよ。それなりの手腕の、ゴリとニコマヨが警備に当たってる。
そんじょそこらの輩なら、あいつ等二人だけでも平気さ」
―――――そう、問題なのは。
「ニコマヨにしちゃあ、読みが甘かったな。妹君の警備を手薄にするなんざ・・・・奴らしくもねえ。
もっと仰々しいくらいに、隊士達を配置しておけっての」
「――――ああ、それなら。紅葉鑑賞を、始める前に。そよ君自ら近藤さんに、断ったそうですよ。
自分にも凄腕の護衛がついているからって」
・・・・・凄腕の、護衛・・・・・か。
――――もしかして、その護衛ってのが――――。
「銀さん?」
「――――今オレ等が動いたら、あの可愛い子ちゃんのドタマに、穴が開いちまう。
恐らく沖田君が動けないのも、それがあるからだ。――――汚ねえ真似しやがって」
舌打ちをしつつ、どうやってこの現状を打破しようかと思案し始めた時。
「ほあちゃああああ!!」
聞きなれた寄声が、『しんじゅく御苑』内に響き渡る。
「――――ま・・・・さか?神楽ちゃん!?」
声を聞いた時の、新八の反応は素早かった――――が。
今は再会を、喜んでる場合じゃあ無い。
「行くぞ!新八!」
「はっ・・・・はい!」
神楽の行動を皮切りに、木陰に身を潜めていたオレ達は――――事件現場へ駆け出す。
突然降って湧いて出た、一人の腰元に。
天人共は、一瞬だけ――――驚愕の表情を浮かべた。
腰元の格好をしていた神楽は、「動きづらいアル」とだけ言うと。
着物の裾を思い切り破き、振袖も袖元から一気に引き裂く。
白く華奢な両腕、両足が現れた――――そして不敵な笑みを浮かべ。
「以前みたいに、また地べたと接吻したいみたいアルナ」
愛用の番傘を手にし右肩に乗せ、銃口を向けられた輪の中に仁王立ちした。