「あの・・・・馬鹿」と無意識に声が、出ていた。
自分達の獲物にも、びくともしない――――突然登場した、一人の腰元に。
天人の一人が、気付いた様に大声を出す。
「――――おいっ!この女――――以前、オレ等に楯突いた奴だ!!
姿は違うけど、声と碧眼だけは覚えてる!」
奴の台詞にその他の天人達は、先程の余裕を捨て身構え始める。
「―――――ばっ・・・・チャイナ!てめえは、すっこんでろ!」
先陣を切り動けずにいた沖田君は、顔色を変え輪の中心人物に声を放つ。
――――な〜るほどね・・・・沖田君が言っていた『奇跡』ってのは。
・・・・ならば、オレも。『奇跡』に、巡り合えた訳だ。
「うるさいアルナ。こんなちゃっちい奴等に、手間取ってるなんて。お前らしくないネ」
沖田君に向かって、そう言うと。
神楽は―――――そよ君を人質に取る、天人を睨み付ける。
「とっとと、その汚ねえ手を放せヨ。それなら半殺しで、許してやるアル」
右足を一歩踏み出そうとする、神楽に向かって天人は――――。
「おおっと。動くんじゃねえよ。此処にいるのは、以前のオレ達だけだと思うのか?」
「―――――?」
野郎の言いたい事が、飲み込めず――――護衛の女は怪訝な表情を浮かべている。
「てめえら!!出番だ!」
天人が一言、空に向かって口を開いた瞬間。
――――数え切れない程の、天人達が湧いて出て来た。
「う・・・・っ。うわあ!急に、地面から――――銀さん!」
新八は驚愕し、オレの方を見やる。
当然の如くオレ等の周囲は、天人の野郎共に囲まれる羽目になった。
「オレ等『天愚党』を、甘く見るんじゃねえぞ!
計画を台無しにしてくれた礼は、たっぷりしてやるから覚悟しとけ!」
天愚党・・・・・?聞いた事もねえな。
ヅラ辺りなら、知っていそうな気もするが・・・・。
「はん!上等ヨ!返り討ちにしてやるから、そっちこそ覚悟するヨロシ」
前方では聞き慣れた声が、奴等に対し挑発をかましていた。
「――――女王さん!!私の事は放っておいて、逃げて下さい!!」
こんな危険な目に遭ってると言うのに、自分よりも神楽の心配をする姫君。
真選組の依頼は――――茂茂公と妹君の、警護。
「――――新八。抜かるなよ?ぜってえ、彼女を助け出すぜ」
腰に差していた愛用の木刀を、ゆっくり抜き――――両手で構えを取ると。
「はいっ!」と、緊張した面持ちで返答が戻って来た。