「神楽」と――――真顔でこちらを見る、禿げた親父。
只ならぬフインキを醸し出しているので、思わず喉元が鳴った。
こんな父親を見るのは、4年前私を「迎えに来た」と言った時以来だ。
「――――お前、万事屋・・・・辞めたそうだな」
「・・・・・・・」
パピーがどうして知ってるかなんて、今更聞いても分かっている。
きっとババアが、喋ったのだろう。
「そして――――今は、妹君の用心棒をしているのか」
「棒じゃないヨ、穴ネ」
「大して、違いは無いだろ。―――神楽」
「・・・・・・何ヨ」
「オレと一緒に、来る気はあるか?
4年前の様に、もう無理矢理連行するつもりない」
勢い良く顔を上げて、父親の顔を凝視した。
――――まごう事無く、真剣そのもの。
「茂茂公の許しは得てある・・・・そして、妹君にもな」
親友の顔が脳裏に浮かんで、思わず大声で名を呼んでいた。
「え!?そよちゃんが!?」
――――――その時、襖の奥から・・・・親友の声が届けられた。
「女王さん?お気づきになったと聞いて、急いで駆けつけたんですけども・・・・」
私は父親に一瞥しながら、襖に向かって返答する。
「もう、大丈夫アル。入って構わないネ」
すると・・・・徐々に開かれる隙間から、そよちゃんの顔が拝めた。
「女王さん!!」
涙を零しながら、抱きついて来てくれた――――大事な親友。
「良かった・・・・本当に、良かった!ご無事で・・・・!
目を覚まさない日が続いた時は、どうしようかと・・・・」
「ごめんね、そよちゃん。心配掛けて」
私もそっと、両腕を上げて抱き締め返す。
「ごめんなさい!私の護衛なんか、していたから
――――こんな危険な目に遭わせて!本当にごめんなさい!!」
「何言うアルカ。その為の、用心穴ネ。
それよりも・・・・君主を守れないなんて、用心穴失格アル。
ごめんね、そよちゃん。怖い思いをさせて」
「いいえ!いいえ!私なんかよりも、女王さんが・・・・
あの時は、心臓が止まるかと思いました」
「夜兎の種族は、あれくらいじゃへこたれないヨ。
何てったって『最強傭兵民族』なんだから」