「――――え?病院じゃなくて、お江戸城にいるのか?」

あんな状態で、何故あのオヤジは―――。

「ああ。星海坊主が連れてったのは、間違いなく其処だ。オレの仲間がその姿を見ている」

「そっ・・・・それで!神楽ちゃんは、無事なんですか!?」

今まで寝そべっていた定春も、この会話を耳にした瞬間――――顔を上げる。

「あくまでも情報で、目にした訳では無いのだが・・・・一命は取り留めたそうだ」

オレは無我夢中で身を乗り出し、ヅラの襟元を鷲掴みにしていた。

「おい!その情報、確かなんだろうな!?偽だったら、唯じゃおかねえぞ!」

「――――銀・・・・さん?」

新八の戸惑いの声が、耳に入ったが――――正直、それ所じゃなかった。

ヅラはオレの両目を逸らさずに、見つめ返して。

軽く息を吐くと、掴まれた襟元から両手を離し身形を正し。

「・・・・・嘘では無い。信じろ」

「・・・・・・・・」

場の空気に居た堪れなくなったのか、新八は「お茶を入れ直して来ますね」と言って。

その場を、後にした。

居間に残されたのは、ヅラとオレと――――定春。

「そんなに大切なら、何故自ら手を離した?」

「・・・・・そんなの手前に、関係ねえだろ」

ヅラは両腕を組み、眉間に皺を深く刻ませる。

「――――お前は、昔からそうだ。本当に大切なモノ程、遠ざけようとする」

「――――それは・・・・」

「己の手でリーダーを、傷つけたくないからか」

まるで心を見透かした様な、長髪男の言葉に。

「!」

思わず、ぐっと喉元が詰まる。

「お前がリーダーを、心から大切にしてるのは・・・・オレから見ても良く分かる。
だからこそ・・・・リーダーもお前の元に、ずっと一緒にいたかったんじゃないのか?」

「―――――怖えんだよ」

「怖い?何がだ?」

己の両手を見つめずっと溜め込んで来た、長髪男にどす黒い感情を吐露してしまう。

「いつか・・・・いつかこの手で。アイツを、穢してしまいそうで。
それがオレにとってとてつもなく、嫌悪で怖いんだ」

「それは・・・・お前がリーダーを一人の『女性』として、見ていると言う事か?」

「ちゃんちゃら、可笑しいだろ?今までは保護者兼、雇用主ぶって来たけどよ。
いざベール剥いだら、其処には獣と化したオレしかいねえんだ。こんなオレを見せれると思うか?」



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