ヅラはオレの言葉を聞くなり、先程よりも盛大な溜息を吐いた。

「・・・・銀時。何故リーダーに、本心を言わない?本当は、懸想してるのだろう?」

「はっ・・・・ば〜か。保護者面してアイツを『ガキ』扱いしてたってのに、
今更どうやって『男』になれってんだよ。第一あの娘はな――――オレの事を、
そんな風には見ちゃいねえよ」

―――――そう。恋愛なんて知りもしない・・・・天然純粋培養娘。

「本人に、聞いたのか?」

眼前の長髪男の瞳が、再び鋭くなる。

「え?」

「リーダー自身に聞いたのか?と、言ってるんだ」

「・・・・そんなモン――――」

聞かなくたって、分かりそうなもんじゃねえか。

「何をそんなに、恐れている?リーダーに振られるのが、怖いのか?」

「―――――ばっ・・・・お前、何言って――――」

「自分の心をひたすら隠して、尚且つ苦しんで・・・・それでお前は、満足なのか?銀時」

ヅラの台詞、一つ一つが・・・・胸に突き刺さってくる。

「――――オレは。お前達には、男も女も関係無いと思っていたんだがな」

伏し目がちだった両目が、瞬時に開いたのを自覚した。

――――――何処かで・・・・・聞いた台詞。

「その言葉・・・・・お登勢のババアにも、言われたよ。
どういう意味か、さっぱり分からなくて――――お前に言われるまで、忘れてた」

「男も女も関係無い――――つまりは心の奥底で眠る、『魂』の問題だ。
お互いの魂が惹かれ合うという言い伝えもあると聞く。恐らくお登勢殿は、それを言いたかったのだろう」

――――お互いの、魂の惹かれ合い・・・・?

そう言うとヅラは、右手の人差し指をゆっくり持ち上げて。

オレの心臓に、指の位置を定めると。

「――――お前はリーダーの、『魂』に惹かれてる筈だ。違うか?
4年間共に過ごして来て、その身で感じ・・・・見てきたのだろう?彼女の全てを。
ならばリーダーにも、同じ事が言えるとは思わんか?――――とにかく、逃げに走るのは。
お前らしくないぞ、銀時。お前の『侍道』とは、そんなものだったのか?
オレの知っている坂田銀時は、常に前だけを見続けて、走り続けて来た男だ」

―――――よりにもよって・・・・ヅラに、諭されるなんて。

自然と唇の片端が上がるのが分かり、悔し紛れに毒を吐いてやった。

「・・・・・余計なお世話だよ。コノヤロー」

「――――ったく。いつまで経っても、口のへらん奴だ」

・・・・確かに。今の現状のオレは、自分らしくねえ。




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