ヅラとの会談を終え、オレと新八は――――神楽の奪還方法を思案していた。
「奪還って言っても・・・・今、神楽ちゃんは――――そよ君の用心棒してるんですよね?」
「ああ。お江戸城内にいるってだけでも、敷居が高けえってのに・・・・・」
オレ達みたいな、バンピーがそうそう簡単に入れる場所では無い。
いっその事以前みたく、忍者に扮して潜入でもしてやろうか・・・・。
何て根も葉も無い事を、脳裏に浮かばせていた時だった。
突然前触れも無く、玄関の戸が開けられたのは。
「?」
オレと新八は互いに視線を合わせると、長椅子から腰を上げる。
「僕、行ってきますよ」と、ダメガネに遮られ。
再度座り慣れた椅子に、腰を下ろした――――が。
「ぎ・・・・ぎ・・・・銀さん!!」
玄関方向から聞こえて来る、新八のどもった声。
結局腰を、上げなきゃならねえじゃねえか・・・・と内心毒づきながら。
居間を後にし、廊下へと足を向ける。
「!?」
―――――玄関先に立っていたのは・・・・神楽の親父だった。
「邪魔するぜ」
一言だけ、口にすると――――ブーツを脱ぎ捨てこちらへ歩いて来る。
「星海・・・・坊主?何で、おたくが此処に?」
「てめえに、話しがある。ちょいと耳かせ。銀髪」
そう言うと勧めもしないのに、勝手に長椅子に腰掛けるオヤジ。
「おい、其処のメガネの兄ちゃん」
「――――え!?あっ、はい!僕ですか?」
「そうだよ。他に、誰がいるってんだ?悪いけどよ、ちっと店まで一っ走りしてくんねえか?
―――――ほら昔、オレがCMに出てたヤツあんだろ。あの育毛剤買って来てくれ」
新八に育毛剤を買い物に行って来いと、指示を出す『宇宙最強のえいりあんはんたー』。
「・・・・はい?」
「もうすぐ切れそうなんだよ。良いから、買って来いって。な?
おじさんこう見えて、気ィ短けえから――――頼むよ」
ドス黒いオーラを醸し出され、ダメガネは悲鳴を上げながら「はいいい!!」と。
万事屋を、後にしてしまった。
残されたオレは・・・・どうすれば良いか分からず、立ち往生。
「何してやがんだ。とっとと座れって」
言われたまま、対の長椅子に腰を掛ける。
「これでゆっくり、てめえと話しが出来る――――神楽についてな」