「明後日には、『地球』を発つアル」
―――――そう。もう、お江戸にはいられない。
いつまでも此処にいれば・・・・あの男の呪縛からは、逃れられないから。
「これもまた・・・・急な話しだねぇ。旦那達は、知ってんのかい?」
「知ってる訳ねえだロ。あれ以来、会っても無いんだから」
「―――――へえ」
ドS王子を残して、どんどん先に進む自身の足を漸く止めて。
身体を180度回転させ、男と対峙する。
「沖田」
―――――初めて、男の苗字を呼んだ。
一瞬驚いていたが、直ぐに「何でぃ」と返事が戻って来る。
「私の事――――好きだって、言ったよナ」
「ああ」
即答で返って来た言葉に、私は唇の両端を上げた。
「悪いけど。お前の気持ちには、応えられないネ」
「――――そんなの、最初から知ってらあ。てめえの胸中に居座ってるのは、旦那だろィ?」
「うん」
不思議と素直に、言葉が出て来る。
「きっと・・・・この気持ちは、永遠に変わらないアル。銀ちゃんよりも、良い男が現れない限り」
「―――オレが、旦那よりも上になるって可能性もあるぜ?」
私は沖田の言葉に、「あはは」と笑って。
「そうかもナ。でも私の中では、銀ちゃんが一番だから。悪いけどお前の入る余地は無いヨ」
そう・・・・ずうっと。『大好きな人』だから。
私の言葉に、沖田は苦笑いを浮かべて。
「・・・・厳しい言葉だなァ。けど――――オレも、諦め悪い男なんで」
「沖田なら、私よりも良い『女』が見つかると思うアル」
両肩を竦めて、「だったら良いけどな」とだけ言うと。
「まあ――――旦那に飽きたら、オレの所に来な。当分隣は、空いてるからよ」
「気が向いたらナ。何だかんだ言っても・・・・くされ縁のお前等と離れるのも。
聊か寂しい気がするネ。お前とは決着、つかず仕舞いだったし」
そう言って再び身体を回転させ、止めていた両足を動かした。
「・・・・決着は、ついてるさ」
「え?」
「オレがてめえに、惚れちまったって時点でな」