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「――――本当に、此処で良いのか?」
「うん。後は、真っ直ぐ行けば良いだけだから」
「そうかィ」
街中で踵を返す、黒い隊服姿の男。
私は無意識に、「沖田!」と呼んでいた。
歩いていた足が、ぴたりと止まる。
「――――今まで、アリガト」
そう言うと沖田は、肩越しから振り向いて。
「よせやい。気色悪ィ」と、言って唇の片端を上げた。
「宇宙行っても、精々気張れよ。オヤジさんの足、引っ張んじゃねえぞ」
「余計なお世話ネ!コンチクショー!」
「へえへえ、んじゃな。――――神楽」
止めていた足を動かしながら、右手を掲げて左右に振る。
――――アイツ・・・・私の名前を、初めて呼んだ。
もし・・・・銀ちゃんより、沖田と出逢っていたら。
私はアイツを、好きになってたんだろうか?
「・・・・でも。やっぱり――――違うよネ」
例え沖田より、遅く出逢ってようが。
私はきっと、銀ちゃんを好きになっていたと思う。
見えなくなるまで、男の背中を見送ると。
私も両足を、動かし始めた。
この先――――私とパピーが宿泊している、ホテルがある。
ビジネスホテル等ではなく、結構名の知れた一流ホテルだ。
パピーが幕府のお偉い方に幅を利かせて、予約させたのかは知らないけど。
どうせ得意の『脅し』でも、噛ましたのだろう。
何はともあれ、一流ホテル・・・・しかも、スイートルームなんて。
『万事屋』時代だったら、縁も程遠い場所だった筈だ。
ホテルのエントラスに踏み入れば、自動ドアが開き。
正面に座してるコンシェエルジュが、揃って立ち上がりこちらに頭を下げる。
「お帰りなさいませ」
部屋番号を言って、カードキーを受け取る。
エレベータに向かえば、エレベータボーイが慣れた手つきで『△』ボタンを押した。
軽快な音と共に、鉄のドアが開く。
それに乗り込んで、宿泊先の階数ボタンを押す。
―――――と言っても、最上階なのだが。
あっと言う間に辿り着き、私はカードキーを持ちながら部屋の前まで歩いた。