―――――どうして!?何で!?

目の前に・・・・銀髪の男が、いるアル!?

もしかして、今――――夢を見ているのだろうか?

起きた状態のまま眠るなんて特技、自分には持ってないのに。

以前の私なら、すぐさま喜び勇んで・・・・男の名を呼んで、抱きついていだだろう。

けれど無意識に、彼との距離を取ろうと――――後ろへと足が動いていく。

それに反し・・・・開けていた距離が、男の歩みによって縮んでいる。

パピーは!?まだ戻って来ないアルカ!?銀髪男の背後にある、ドアに視線を寄越せば。

眼前の男は、私の心を読んだかの様に。

「親父さんなら、来ねえぞ」

「―――――え!?」

じりじりと追い詰められ――――背に当たったのは、先程眺めていた大きな窓。

「・・・・神楽。何で――――避けやがる?オレから遠のこうとする?」

・・・・何でって、言われても。分からない。

現にこの男が現れるまでは、私は『銀ちゃん』の想いを馳せていた・・・・筈なのに。

身体が無意識に、彼から離れていこうとするのだ。

―――――あれだけ、恋焦がれていたのに?

「逃げるなよ、神楽」

再度一歩、窓辺へと近づこうとする――――銀髪の男。

背後を無くした私は、瞬間両足に力を篭めて――――床を蹴った。

「!?――――かぐ――――」

一回転して男の背後に着地すると、そのままドアへと駆け出す。

―――――が。後ろから、右手首を囚われてしまう。

「――――――っ」

「逃げるなって、言ってんだろうが!つうか、こっちを向けっての!」

力強く握られた右手首から、男の熱が伝わって来るのが分かる。

―――――何で?どうして、急に?

「・・・・・せヨ」

「は?」

「その手を、離してヨ!」

抵抗しようとするが、男もその手を緩めようとはしない。

「離せば、お前此処から逃げるだろうが!」

「――――当たり前アル!『万事屋』を出て行けって言ったのは、銀ちゃんネ!
私がいると一人の時間が、出来ないって・・・・そう言ってたじゃねーカ!」

――――そう。だから、居心地の良かった・・・・あの場所を離れて。

銀ちゃんの世界から、抜け出そうとしたのに。




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