「―――――信じられないアル!」
ホテルをチェックアウトした私達は、『かぶき町』のを目指し歩いていた。
『とある場所』が歩く度に擦れ、痛みを連れて来る。
更にオプションといった感じで、腰までが痛い。
「そんな事言ったってなあ?――――銀さんが、悪いんじゃないんだよ?お前が誘惑するから―――――」
いけしゃあしゃあとそんな台詞を吐きながら、隣を歩く男に睨みを利かした。
「――――いつ私が、誘惑したネ!こんの助平男!」
私の言葉に銀髪男は、唇の両端を上げると。
「お褒めの言葉、ど〜も♪」
「褒めてない!」
もう・・・・当分は、許してやらない。
両頬を膨らませて、固く心に誓っていたら。
「・・・・やっぱり、並んで歩くって。良いモンだな」
銀髪男が、笑顔を浮かべてしんみりと呟く。
「――――うん」と、私も自然と笑顔になった。
銀ちゃんの隣に、傍にいられる事が――――こんなにも、幸せと感じるなんて。
「あっ・・・・そう言えば」
「?――――どしたネ?」
突然思い出したと言った態で、男は片手を広げその上に拳を軽く置くと。
封筒の様な物を、懐から取り出した。
「・・・・・それ」
そう。私が『万事屋』との縁を、断ち切る為に書いた。
『辞表』。
「――――これ。破棄すっぞ」
「ずっと・・・・持ってたアルカ」
男の掌の中にある、未開封のままの封筒を見つめる。
「ああ。一度は、受理したけど。やっぱり、受け取れないし。つうか受け取る気、一切無いしね?」
そう言うと、『雇用主』は。両手で一気に『ソレ』を、二つに引き裂いた。
更に細かく細かく千切っていき、天に向かって放り投げれば。
紙吹雪と化した、『辞表』は――――ハラハラと舞っては、地面に落ちていく。
「――――二度と、手にするのはご免だ」
足元に散らばる紙片を、見つめて。
「帰るぞ。オレ達の、居場所に」
そう言うと、私に笑顔を向けて―――――また、歩きだす。