あ〜・・・・やっぱり、怒ってるよ。
まあ、それはそうだろう。自分の最愛の娘が、男と朝帰りだもんな。
いくら、背中を押してやったって。まさかこうなるとは、思ってなかった訳だろうし。
口内に溜まった唾液を、喉元へと流し込み。
対となっている長椅子へと、腰を下ろして眼前にいる禿げオヤジに視線を向けた。
「ちゃんと、てめえの気持ちに。ケリを、付けて来た」
「――――ほお?そんで?」
眼光を鋭くさせたままで、両腕を組み――――話の先を促してくる。
「神楽は、傍にいてくれると」
オレの台詞を耳にして、この状況を見守っていた娘に視線を移動させた。
「そうなのか?神楽」
父親から問い掛けられて、娘は決まり悪気に首を縦に振ると。
小さいながらも、しっかりした口調で答える。
「・・・・・うん。ごめんネ、パピー。私・・・・まだ。銀ちゃんの、傍にいたいアル」
「――――それが、お前の本心なんだな?」
再度問い掛けられて、神楽はもう一度首を縦に振った。
その姿を見て、「そうか」とだけ呟くと唇の両端を上げる。
瞬間にドス黒いオーラは消え、通常の星海坊主に戻っていた。
「お前がそう思ってんなら、そうすると良い」
父親の言葉に、2つの碧眼は弾かれた様に開かれる。
「・・・・本当に、良いノ?」
「お前がそうする事で、幸せだってんなら。オレは何も言わないし、ましてや止める事なんざ出来ねえよ」
「パピー・・・・・」
「親ってのはな、子供の幸せを一番に願うモンなんだ」
昨日オレに言った事を、そのまま娘に伝える。
『えいりあんはんたー』としてではなく、父親の顔を浮かべて微笑んで。
「生を、受けた以上は。幸せになれ。神楽」
この言葉に神楽は、両目を潤ませながら。
「・・・・・アリガト」と、返答をした。
二人の会話を耳に入れながら、改めて実感する。
やはり――――オレも、こんな父親が欲しかったと。
物心着く頃から、親の『愛』なんざ――――知る由も無かったが。
「お前と一緒に『銀河』を巡るのは、まだ先になりそうだな・・・・・さてと、銀髪」
長椅子から上半身だけ乗り出し、右手を掲げて。
人差し指の第一関節を手前に2・3回に曲げると。再び眼光を鋭くさせた。