超がつく程の至近距離で、オヤジ様は両目を血走らせていた。
歯を軋らせながら、危険な笑みを浮かべている。
「――――で?銀髪。神楽ちゃんとの、『朝帰り』・・・・説明してもらおうか?ああ?」
娘とダメガネ青年の前なのを気にしてか、小声で問い掛けられ。
どう説明しようかと、脳内細胞をフル回転させながら。
「えっ・・・・と・・・・デスネ。そのう――――」
こちらに向けられる鋭い視線に、思わず逃れる様にして顔を逸らせば。
「・・・・結果が。吉と出ようが、凶とでようが。てめえは『万事屋』に戻って来ると、思っていたんだが――――?」
ドスを効かせた重低音で、オレが考えた事を口にした。
ええ、本当。その通りデス。
スミマセン。ゴメンナサイ。歓喜に奮えて、そんな考え吹っ飛んでマシタ。
―――――お父さんの大切な娘さんを、『頂いて』しまいマシタ。
・・・・・と。当然連なれた言葉が、口からスラスラ出て来る筈も無く。
「・・・・・・」
喉元を噛み付かれた獲物の様に、唇を上下に動かしパクパクさせるだけ。
そんな態度でした応えられないオレに、業を煮やしたのか。
星海坊主はテーブルに置いていた、右手を持ち上げて。
大事なオレの髪を、むんずと掌で鷲掴みして来た。
「何も言わねえって事は・・・・つまり、『そういう事』なんだな?」
鷲掴みにしてる手が、怒りで震えてる気がしてならんのだが。
つか、マズイ展開だよ?これ。もしかしなくても、殺される?殺されんのおおお?
折角――――昨晩、神楽との気持ちが通じ合ったばかりなのに?
え?もう、此処で人生の終幕?はい、さようなら?天国から地獄に、真っ逆さま?
突然。眼前のオヤジが、動いた気配を察し。
「!」
――――オレは無意識に、両目を強く閉じた。
・・・・・が。いつまでも、衝撃は来る事無く。
掴まれていた自由奔放の髪が、解放されるのを知る。
おそる、おそる。両目を開けていくと――――。
長椅子の背凭れに身体を預ける、星海坊主の姿あった。
「――――さてと。神楽ちゃんの顔も、拝めたし。オレはそろそろ、行くとするよ」
「え?――――もう?」
父親の言葉に、驚きの声を上げた娘に対して。
「ああ。此処にいる意味は、もう無くなったしな。依頼を受けている『惑星』に旅立つ事にする。
本来なら明日なんだが・・・・まあ1日早く着いた所で、何ら問題ねえし」