いかにも、高級な黒のコートを。
店内に入ると同時に、脱ぎ出し。
背後に控えていた、内勤の男に手渡す。
蒼を基調とした、チャイナ服から。
全ての男を、虜にすると思われる程の
身体のラインが出現。
大胆な切れ込みが入った、スリットからは。
陶磁の様な肌をした、太股が見え隠れしている。
魅惑的な笑顔を浮かべた美女が、近づいて来たので。
オレは、ソファから立ち上がり。
「ようこそ」
一礼して、席に薦めた。
「――――あら、金時。珍しい。今日は真面目にご出勤?」
薦められたソファを、当然の様に腰掛け。
自然に左足を組むと、露になる脚。
太股から、ヒールの先までが。
美しく―――――艶かしい。
オレも隣に腰掛け、返答する。
「珍しいはないんじゃないの?こう見えても、真面目に働いてんのよ?」
「ふふ。それは、失礼」
「そういやあ、いつも連れてる側近共は?」
逞しいガタイを持ち、厳つい顔をした野郎達がいない。
「事務所よ。此処なら、目と鼻の先だから。待機してもらってるの」
すると。
右手に書類らしきモノを、掲げた男が。
神楽の前で一礼し、「こちらです」と手渡す。
「有難う」
渡された書類に、早速両目を滑らせた。
「――――大変だねえ、『オーナー』ともなると」
「どして?」
書類から目は離さず、口だけが動く。
「人員・経営・総売上げ・その他諸々。いろいろと、考慮してかなきゃいけねえし」
「そんな事ないわよ。この店あくまでも、『趣味』でやってるだけだし」