そんな事を、考えていたら。
私の背中に回っていた、銀ちゃんの片腕が――――何時の間にやら前に移動していた。
パジャマのボタンに手を掛けて、一つずつ・一つずつ。
―――――ゆっくりと外していく。

途端に――――心臓が、早鐘の様に動き出した。
キスの時は至って、落ち着いていたのに。

重ねられていた唇は、名残惜しそうに離れていき。
私の顔至る所に、唇の雨が降り注ぐ。

「―――――怖い?」

顔を覗き込む男の顔は、普段とは見違える程優しい顔を浮かべて。
もう一つの無骨な手が、頭をそっと何回も撫でてくれている。
―――――怖くないと言えば、嘘になるけど。

「・・・・・ううん」

首を左右に少しだけ振って、返答したが。
気付けばボタンに掛けられた手は、動きを止めていた。

「―――――今なら、引き返せるけど?」

「大丈夫」

少し強い口調で、返事をしたら。
銀ちゃんは「了解」と、再び手を動かし始める。
全てのボタンを取り外し、覆い隠していた布が左右に開かれて。
私の肌は、徐々に外気に晒された。

「――――――――」

何だか恥ずかしくなって、思わず両腕で身を隠す。
いくら明かりは消してあると言っても・・・・。
こんな至近距離で、異性に自分の身体を見せた事なんて無い。

「―――――何で、隠すんだよ?」

突然咎めるかの様に、頭上からの声が聞こえて。

「・・・・何でっ・・・て・・・・」

そんな事――――言われても。
恥ずかしいモノは、恥ずかしいんだから仕方ないネ。
しかし男は両手で私の手首を掴み、上へと移動させた。

「ぎん―――――!」

「お前の身体、じっくり見てえんだって。隠すなよ。月光に照らされて、すんげえ綺麗なのに」

・・・・・綺・・・・麗・・・・・?
私の身体は、銀ちゃんにとってそう映ってるノ?
女の人の身体なんて、本当は見飽きてるだろうに。

「・・・・・ホントに?」

「――――こんな場面で、嘘言ってどうすんのよ?」

抵抗する気は無いと見たのか、私の手首をから手を離し。
5本の指でそっと身体の中心――――首筋から、お臍まで滑らせた。

「――――――!」

思わず背中が持ち上がり、身体全体で弧を描いてしまう。

「華奢だよな・・・・本当、あんな『力』が嘘みてえ。どっから湧いて出てくんの?」

そう言って男の指は何度も、同じ場所の上下を行ったり来たり。
その度に身体は、反応を起こす。



「ふ・・・・・・あ・・・・・くす・・・・ぐった・・・・い」

「――――・・・・すげえ、動いてんな」

手を止めて、心臓の鼓動を確認している。
「緊張してんのか」と、問われたので。

「・・・・・銀ちゃんは?してないノ?」

―――――と、逆に聞き返してやった。
すると私の左手を掴むと、己の心臓付近に掌を置かせる。

・・・・・あ。
銀ちゃんも―――――物凄く、早い。

「笑っちまうだろ?大の男が――――余裕無いなんて」

「そんな事―――――」

「無い」って言おうとしたのに、言葉は遮られた。

「・・・・正直さ。お前に触れようとするだけで、手が震えんの」

震える?・・・・・・どうしてだろう?
銀ちゃんは私と違って、『初めて』じゃない筈なのに。
浮かんだ疑問を、見透かしたみたいに苦笑いを浮かべ。

「――――それだけ。『大切』って事なんだろうな」

「大切?」

「そう・・・・ついつい、慎重になっちまう」

「どして?」

「どしてって・・・・そりゃあ、『大事な物』を頂く訳だからね。生半可な気持ちじゃあ、マズイだろ」

「?」

―――――言ってる意味が分からなくて、眉間に皺が寄る。
それを察した銀ちゃんは、軽く溜息。

「お前の『初めて』が――――銀さんに、委ねられてるって訳。光栄の至りだけどな」

「――――――ふあ!」

突然。
心臓付近に置かれた手が、片側の小さな丘陵にそっと移動した。
それに呼応して、全身が一瞬固まる。

「・・・・・さっきよりも、早まったな」

それは、多分。
置かれた手や指の感触が、ダイレクトに伝わって来るから。

――――止まっていた動きは、やんわりと行動を始めた。
膨らみを中心に、男の指が伸縮運動を繰り返す。

――――最初はくすぐったさが、先に来ていたのに。
どんどん消化され、表現しがたい感覚が私を襲い始めた。

無骨な指はそれだけに留まらず、丘陵の頂点へと移動旋回し。
撫でる・擦る・摘まむと言った、動きがランダムに行われる。
味わった事の無い『電流』は、休む事無く――――私の全身を駆け巡った。

「あ・・・・あ・・・・はあ・・・・・んん・・・・」

それを境に、室内には。
私の口から微かに漏れる吐息と、途切れがちに奏でられるソプラノが流れ出す。

今まで聞いた事が無い、己の声に―――――羞恥心が生まれた。
シーツを握っていた右手を、口に持っていき塞いだが。

「――――我慢するな」と。
もう一方の見慣れた手が、その手を退かせた。

「で・・・・も。はず・・・・か・・・・し・・・・い」

今でさえこんな、途切れ途切れで。
しかも自分の声じゃ、ないみたいなのに。

「恥ずかしくねえよ。声が出るなんざ、当たり前の事なの。――――もっとオレに、お前の声聞かせろって」

言葉を繰り出すも、指は動いたまま。
襲い来る感覚は、先程よりも強くなって来ていて。
いつの間にか・・・・もう片方の丘陵にも、同じ動作が行われていた。

「あっ・・・・ああ!」

二つの膨らみと尖りを責められて、更に己の声が高く上がる。
頂点に感じていた指の感触が、突如・・・・生温かくぬるりとした感触に。
口に含まれた尖りは、男の舌で蹂躙され始めた。
痛気持ち良さから、何倍もの気持ち良さへと変貌する。

「―――――ふっ・・・・・あっ」

思わず顔が仰け反り、天井を映していた風景は窓に変わった。

―――――頭の奥が、じんじんと痺れて。
・・・・・どうにか・・・・なっちゃい・・・そう。

視界は霞み自身の口からは、何度も喜びを含んだ小さな悲鳴。



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